暁富士
ハードタイプ、約10ヵ月間熟成。
新利根チーズ工房において、最長の熟成期間を持つ商品である。当工房で使用しているミルクは、この地で生まれ、この地に根付いた飼料を食べて育ち、そうして日々を穏やかに生きている乳牛たちから搾った新鮮なミルクであり、そのミルクをハードチーズに加工して、この地の風土で約10か月間じっくり熟成させたのが「暁富士」である。
ナッツと干し草のような香ばしさに、ほんのり感じるミルクの甘み、長期熟成によってじっくり形成されたコクと旨味がギュッと凝縮しており、その奥深い風味はこの地でしか表現できないものである。
それは言わば、当工房が所在する稲敷の風土をあらわす味である。
- □商品1個あたり内容量
- 約80 ~ 120g (価格については1g単位で計算)
- □製造・熟成方法
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生乳を加熱殺菌したあと、乳酸菌・酵母とレンネット(凝乳酵素)を添加。
カード(凝固したミルク)をカットして適度に撹拌し、ホエイ(乳清)からカードを取り出し型に詰める。
その後、反転を繰り返しながら圧搾し、予冷後に1日塩漬する。その後、3~7日に1回反転しながら約10ヵ月間熟成する。 - □商品名について
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新利根チーズ工房のすぐそばを流れる新利根川は、冬の良く晴れた日の早朝、あるいは夕方になると、その流れの遥か彼方に富士山のシルエットを望むことができる。日本一高い山である富士山、その山頂は「ゴール地点」としての比喩に用いられることがあり、新利根川の流れの遥か向こうにそびえる富士山という景色は、なおさらそのイメージを強くしている。ところで、多くのチーズ生産者にとってハードチーズを手掛けることは憧れであり、チーズ工房を営む者なら一度は夢見るものである。
しかし、ハードチーズの製造は難しく、本当に美味しいハードチーズを作るには、長い年月の製造経験が必要である。
当工房もそう思って、ハードチーズの製造はしばらく先だと考えていた、そんな折。工房がオープンして約3年後、数々のトラブルにコロナ禍の影響が重なって、当工房史上最大の経営危機に見舞われたことがあった。
その時、少しでも売り上げを確保しようと熟成庫で半ば放置していた失敗作のラクレットを店頭販売した。
表皮にラクレットらしいリネンス菌が生えなかった代わりに、まるでハードチーズのような食感と予想以上の旨味を持っていたそれは、作り手の予想に反してお客様から多大な人気を博し、その甲斐もあって危機を脱したのだった。
そこから「お客様はこんなにも硬いチーズが好きなのか」と実感して、翌月からハードチーズを試作し始めた。自分が心から納得のいくクォリティの本商品を作ることが出来た時、それはチーズ生産者にとって富士山頂で見るご来光、すなわち、ゴール地点まで登り詰めた証しであると言えるだろう。それまではチーズ生産者として努力することを止めない、という誓いを込めて「暁富士」と名付けた。 - □おすすめの食べ方
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「暁富士」の香ばしさは、ワインはもちろんウィスキーなどの蒸留酒や純米酒などにも良く合うが、緑茶との相性も抜群なので、お茶請けとしても召し上がっていただきたい。
また、パンと合わせるときは、バターロールやクロワッサンなど多少甘みを感じるパンの方が「暁富士」の香ばしさがより引き立つと同時に、パンの甘みも引き立つ。